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『福祉の矛盾』

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■間違いだらけの「障害」と「グループホーム」■
『福祉の矛盾』
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こんにちは。
グループホームHARUです。

障害支援区分が3年1度のペースで更新されます。

この障害支援区分によって単位が大きく変わるので、
施設経営の観点でいえば、大事な指標の1つです。

特に区分3,区分2は単位が引き下げられていますし。

先日、驚くべきことがありました。

入居者2名が区分4から区分2に、
2段階も引き下げられていたことです。

本人に定められた質問をされてはいますが、
ホーム側の支援者や管理者にはヒアリングがありませんでした。

つまり本人の自己申告によって、
区分が判定されてしまっているようです。

区分1くらいの上下でしたら驚きはしないのですが、
区分2が上下するのは稀でしたので、
区分調査員の方に念のため確認を取りました。

「利用者のAさんは、どうして区分4から区分2に
引き下げられたのでしょうか?」

「以前の区分調査時は実家でした。
 実家の時は本人も不安定で、ご自身でできることも少なかった。
 お母さまも大変困っていました。
 直近HARUさんにお世話になって、生活面では大きく改善され
 落ち着いて暮らしているとお母様からも伺っています。
 グループホームに入って生活面が改善されたのが理由です」

 

「本人がグループホームに入って生活が落ち着き、
 ご自身でできることが増えたのは、一部は支援者側の“成果”です。
 成果を出すと報酬が下がるということですか?
 またグループホームの支援者に、Aさんの生活状況の確認をしないのですか?」

「残念ながら…、そういう仕組みになっていますので。
ご両親には生活面での変化の確認をしています。
電話ではご両親もグループホームさんには本当に感謝されていました」

こんなやりとりがありました。

言葉は悪いですが、報酬が下がらないためには、
入居者さんが自分でできることが増えてしまっては困るということになります。
自立をしない方が良いと。

 

今回の件で言えば、
本人のみ聞き取りで、最も生活面での長い時間を見ている
グループホーム職員への聞き取りがなく、区分判定をしてしまったこと。

そして“成果”を上げると報酬が下がるという、
他業界とは真逆のことが起きるということ。

 

入居者さんが穏やかに暮らして、生活が安定し、
就労が継続できるように、支援者はあれこれ工夫をしています。

しかし工夫を重ねた結果、
自分たちの首を絞めるという矛盾した状況が生まれるのです。

これは「福祉の矛盾」ですね。

『“納得”にたどり着くには?』

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■間違いだらけの「障害」と「グループホーム」■
『“納得”にたどり着くには?』
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こんにちは。
グループホームHARUです。

入居者の特性は様々。

スタッフの皆さんは、
個々の特性を把握しながら
試行錯誤しながら支援されていると思います。

「自分が望む答えが出るまで
 なかなか納得をしない」

こういった傾向の方もいるかと思います。

例えば個人の希望と
グループホームのルールが
相対立することがあります。

一個人の希望としては叶えたい気持ちもあるが、
一方でグループホームのルール上、
許可ができないことがあります。

論理的・合理的に説明をして、
その場では納得をした様子を見せていたAさん。

しかしAさんから時間をおいて
また同じ質問をされてくることがあります。

次はAさんから別のスタッフに
同じ質問をしてくることがあります。

スタッフによって180度異なる回答をしてしまうと
混乱をさせてしまうため、
回答のガイドラインをすり合わせることが必要ですね。

またグループホーム外の方へ
Aさんから同じような質問をされることもある。

残念ながら普段一緒にいる時間が
長い支援者からの意見が
本人に届かない時があります。
(一緒にいる時間が長いが故に…)

定期的にモニタリングをされる相談支援員さんや
ご両親・就労先のスタッフのコメント等によって、
納得されることもあるようです。

本人の話に耳を傾けつつ、
本人が“納得”にたどり着くまでに
手を変え品を変える工夫が必要ですね。

『障害者雇用から見えた農業の弱点 PART3』

こんにちは。

グループホームHARUです。

 

前回に引き続き、
十方よし.TV11号のゲストである
京丸園株式会社の鈴木社長のお話です。

鈴木社長は「戦わない経営」を模索したといいます。

他農業法人と同じ土俵で事業を展開すれば、
価格競争になり、しいては自社の首をしめる。

そうなれば、いずれ障害者の皆さんの雇用を
守ることができなくなる。

農作物は作る物によっては、
栽培から収穫が一定の期間で行われ、
年間を通して閑散期と繁忙期が生じてしまう。

ですから1年中仕事があり
年間を通して波がないもの。
そして他社と戦わないもの。

この2つの条件で行きついたのが
ミニチンゲン菜でした。

ビニールハウス栽培をすることで、
季節に関係なく栽培が可能。

チンゲン菜は多くの場合、量り売りをされ、
1キロ=○○円で取引をされる。

ですからミニチンゲン菜は、
重さを稼げずに非効率な商品。

栽培・収穫に手間がかかり、
他法人がやりたがらない商品であり、
市場に供給量が少ない。

フカヒレスープ等と一緒に入っている料理を
皆さんも見かけることがあると思います。

需要は一定数あり、作る人が少ないため
単価は高めに設定できる。

自社には「手間をかけられる」強みがあり、
多くの障害者が働く組織において、
ここに活路を見出したわけです。

米国の経営史学者である
アルフレッド・チャンドラーは
「組織は戦略に従う」と言いました。

戦略が決まらなければ
必要な組織構造も決まらない。

どのような戦略を取るかによって、
あるべき最適な組織は変わってくる。

多くの会社で組織変更や人事制度が変更されても
会社が変われないのは、
戦略や事業領域が変わらないまま
組織だけ変えようとするからだと言われます。

一方、米国の経営学者であるイゴール・アンゾフは
「戦略は組織に従う」と言いました。

ビジネスを取り巻く環境の変化が起き、
新しい仕組みや資源を導入して、
組織が新しい能力を手に入れる。
その新しい組織の能力を実行できる戦略が生まれると。

アンゾフ教授とチャンドラー教授の主張。
実存する会社の成功要因を調べれば、
どちらが正解ということはなさそうです。
どちらも正解。

今回の京丸園様は後者の考え方でした。

自社の組織の強みを抽出し、
掛け合わせ、強みを再定義する。
そこから新しい事業戦略を立てる。

皆さんの会社でも
強みを再定義してみてください。

『障害者雇用から見えた農業の弱点 PART2』

こんにちは。
グループホームHARUです。

前回に引き続き、
京丸園株式会社の鈴木社長との対談内容について。

雇用した障害者が
トレーを洗う作業一人でできるように、
担当者に合わせてオリジナルで機械を
準備したそうです。

ただしこの機械を作るまでに、
ほとんどの機械メーカーさんから
断られました。

なぜならば個に合わせた仕様だからです。

通常は性能のよい機械に合わせて、
人間が操作を覚えてもらう。

逆の発想だからこそ、
どこのメーカーさんも
一緒に共同開発する所まではできなかった。

さらに言えば、
担当者の残存能力を極力活かせるように、
機械の機能は最小限にしたそうです。

他の方が作業すれば面倒だと思うことも、
残存能力を活かすためにあえて機械化・自動化しない。

結果、機能を最小限に抑えることで、
機械代も最小限に抑えることができたそうです。

また雇用した障害者の方から、
夏になれば、

「ビニールハウスの中が暑い」
という声が出ていました。

「それは当たり前。ビニールハウスの中だから。
 農業ってそういうものでしょう?」

と鈴木社長は思っていたそうです。

ただし作業所の先生から
「ビニールハウスでの作業が熱中症に繋がりかねない」
という指摘されると、
それにも鈴木社長は謙虚に耳を傾けました。

なぜなら雇用している障害者は、
「雇用してあげている」という主従関係というよりも、
貴重な戦力、つまりビジネスパートナーと
捉えていたからでした。

そこであれこれ試して、
最終的には数百万円もかけて
ビニールハウス内にミストシャワーを設置。

定期的に噴霧することとでビニールハウス内の
温度を下げることができました。

働く人にとっては、
今まで以上に快適になりました。

さらに嬉しい誤算としては、
ミニチンゲンサイの生育スピードが上がったり、
質が良くなったとのことです。

「人間にとっていい環境ということは、
 実は野菜にとってもいい環境だったんです」

数百万円かけて設置した
ミストシャワーの投資額も
想定より早く回収できたそうです。

暑い中で作業するのは当たり前。
それが農業の常識でした。

でも見方を変えれば、
それも農業の弱点。

障害者雇用をし、
働きやすい環境を模索する中で、
農業の弱点を次々に克服するのでした。

『障害者雇用から見えた農業の弱点』

こんにちは。
グループホームHARUです。

京丸園株式会社の鈴木社長と対談の機会をいただきました。

令和4年にノウフク・アワード2021グランプリを受賞。
農業と福祉の連携を目指しています。

毎年1名ずつ少なくても障害者を1名以上雇用することを決意し、
今となっては従業員94名のうち22名が障害者。

障害者雇用をなぜ始めたのか。

当時求人を出してもほとんど人が集まらない。
集まるのは超高齢者くらい。

そのような中、ご縁があり特別支援学校から
学生を職業体験として一定期間、
引き受ける機会があったそうです。

中には、ご両親が訪れて、
「お金はいらないからここで働かせてください」
と懇願してくる人もいた。

お金のために働いている自分からすれば、
「お金はいらないから働かせてほしい」
という訴えは衝撃的だったといいます。

職業訓練の一環として障害者を受け入れて、
農業の弱点が見つかりました。

苗を入れるトレーを「綺麗に洗っておいて」と
その訓練生に作業指示をした。

しばらく経って様子を見にくると、
その1つのトレーをただひたすら洗っている光景があった。
全く作業は進んでいなかったそうです。

それを見た鈴木社長は
この子は難しいと判断したそうです。

後日、特別支援学校の先生にその事実をお伝えすると、

「どのような指示を出したんですか?
 何回どこをこするのか、どのように洗うのか。
 何枚で束ねるのか。
 あなたの指示は、指示ではありません。
 あなたの指示に問題がある」

と、こちら側の非を責められたそうです。

しかし冷静に考えてみればその通りで、
具体的な作業指示は何一つしていない。

これまでの農業は「勘」で成り立っていると
弱みを見つけたのです。

それをヒントにトレーを洗う専用の機械を用意。
どの向きでトレーを入れるのか、
洗い終わったトレーにセンサーが反応し
自動的に枚数がカウントされる。
そして1ケース分終わると音が鳴るという工夫もされる。

苗植えも同様。
感覚でやっていた作業に疑問を持ち、
オリジナルの小道具を作り、
誰でも同じようにできるようにしました。

「勘で動くのではなく、
 誰がやっても同じようにできる」

それができていないのが農業の弱点でした。

農業には人材が必要だと言われながら、
誰もができるような工夫と努力をしていなかった。

障害者雇用はそれを気づかせてくれたといいます。

能力がない、センスがないと仕事ができない。

そうではなく
どんな人でも同じようにできないか、知恵を絞る。

それが我々リーダーの大切な仕事の一つですね。